IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション
ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。
すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。
目次
日本企業へのIFRS強制適用を遅らせる議論が続いていますが、その間も日本の会計基準のコンバージェンス対応は続きます。こちらは日本企業にとっては現在進行形の制度対応そのものなので、時期や検討の方向性がどうなっていくのかといった動向が気になるところです。
それにも係らず、ASBJのプロジェクト計画表は昨年12月17日以降、更新されない状態が続いています。今回のIFRS延期の議論を受けて、当然、近い時期に更新はおこなわるはずだと思いますが、とり急ぎ現時点におけるコンバージェンスの進捗状況を再確認する意味で、6月10日付のASBJのプレスリリースから情報を抜粋すると以下のようになります。(一部、加筆をしています)
(1) 短期コンバージェンス・プロジェクト
2005年7月に公表された欧州証券規制当局委員会(CESR)による同等性評価の過程で特定された日本基準とIFRS の間の主要な差異。2008年までに差異は解消された。
<完了>
(2) その他のコンバージェンス・プロジェクト
(2)-1
先述のCESRによる同等性評価の過程で特定された日本基準とIFRSの間の差異のうち、短期コンバージェンス・プロジェクトに含まれていない項目。東京合意では差異解消の目標期日を2011年6月30日としていた。
<完了>
<未了(遅延)>
(2)-2
2011年6月30日後に適用となる新たな基準を開発する現在のIASBの主要なプロジェクトから生じる差異に係る分野。これらについては2011年という差異解消の目標期日は設定されていない。
<完了>
こうしてみると、以前に論点整理や公開草案を公表したまま、今後の予定が明らかにされていない基準が多すぎる気がします。
また、コンバージェンス後の日本基準は基本的にIFRSと同等の要求事項を盛り込んだものになると考えられますが、現在、公開草案の検討がおこなわれている無形資産についての議論の状況などを見ると、例えば開発費の資産計上については現時点では結論を出さず、当面、費用処理とするといった選択肢も挙げられており、将来的なIFRSまで見据えた場合に企業側がどのように対応を進めたらよいのか判断をしづらくなるのではないかという懸念があります。長い目で見たときにはかえって企業側の負担を増すことになるのではないかという危惧もあります。
IFRS適用時期が延びるということであれば、ASBJにはとりあえずの目先の対応ではなく、将来的に日本基準はどうあるべきかという観点からの議論をしていただき、その状況を議事内容の公表やプロジェクト計画表等でもう少しオープン、かつ頻繁に公表していただきたいところです。
担当:藤原啓之( ISIDコンサルタント / IFRS Certificate )
こんにちは、公認会計士の中田です。
このコーナーでは、私の著書である『わかった気になるIFRS』の巻末に紹介している『IFRS質問箱』に実際に投稿された質問とその回答を中心に、このメルマガ読者の皆さんからいただいた疑問点や、ISIDのコンサルタントがお客様からいただいたご質問なども交えてご紹介しています。
学習レベルにはバラツキがあり、いろんな部署の方からのご質問があります。これまでみなさんが持たれた疑問と比べることも、意味があるはずです。
また、これまでどこにも公表されていない貴重なQ&Aですので、どうぞご期待ください。
今回は、経営管理面で取り組むべきことについてのご質問を取り上げます。
IFRSも状況がかわり、部分適用など見直し議論が高まっていますが、我々企業としては、今後どのような対応が望ましいのか少々戸惑う状況です。グローバル企業の定義はなにか、準備期間では何が重要か、しばらくペンディングにしておくのが良いのかなど判断がつかない事があります。
システムについてはシステムの人間が中心に進めていますが、IRや経営管理を行うユーザー側としても、何かきちっとした指標なりモニタリング方針を作らねば、と思っています。
このような環境変化の激しい時期は、基本に返り、経営管理指標をしっかりと見定めなおし、そのモニタリングをどうしていくか、どう共有していくかをじっくりと行ったほうが良いのでしょうか。
この機会に基本に立ち返り、経営管理指標をしっかりと見定めなおそうという取り組みは非常に意味のあることだと思います。
IFRSを適用するかどうかという制度面の話とは別に経営管理の面で考えると、IFRSに対応した経営の在り方にする必要はないし、義務もないということは自明のことと思いますが、IFRSは経営の在り方を考えるときに非常に示唆に富んだものであると思います。
経営管理の面でIFRSを利用するならば、個々の基準ではなく、ぜひ概念フレームワークにある考え方を参考にしていただくのが良いと思います。
概念フレームワークにある考え方を利用する一例をあげてみましょう。
IFRSでは、日本のような画一的な開示フォームがなく、表示する勘定科目自体を各企業が自主的に決定する必要があります。これは、各企業活動は、たとえ同業であっても、経営者が異なれば、異なる活動をしているので、その活動を財務報告利用者に最もよく表現する方法は、企業によって異なってしかるべきだという考え方があるからです。
どのビジネスが儲かっているのか、損をしているのか。さらに、これからどのビジネスが儲かりそうなのか損をしそうなのか。そういったことが予測できるような開示が必要になります。これは経営者にとっても本来必要なことでしょう。従来の日本の制度上の勘定科目を利用して役員会資料を作成されていたとすると、かえって経営管理上も意思決定にあまり役立たない指標になっていたかもしれません。
たとえば、設備投資の予実管理にしても、財務諸表規則などの制度上の勘定科目で行うと、「建物」や「機械装置」といった勘定科目になりますが、それだけでは設備の目的が分からないので、適切な状況把握もできず、意思決定にも役立たないのではないでしょうか。
これを、開発用設備、製造ライン、販売用設備などといった、制度上の勘定科目とは異なる勘定科目で管理して経営トップに報告するようにすれば、どんな設備がどうなっていて、今後のキャッシュ・インフローにどのような影響があるかを予測する有効な指標の一つとなるでしょう。特に製造関連設備は、その生産能力の増減が将来キャッシュ・インフローに、直接的な影響をもつので重要になるでしょう。
このように、従来当たり前のように算出してきた指標が、経営判断に役に立っているのかどうかという見直しの際に、IFRSの概念フレームワークは役に立つと思います。ポイントは、「将来のキャッシュ・インフローの予測に役立つ」指標かどうかです。
「基本に返り、経営管理指標をしっかりと見定め」なおされるのであれば、ぜひこのような考え方も参考にしていただければと思います。
このコーナーでは読者のみなさまからのご質問を受け付けています。
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