ISID IT Solution Innovator

株式会社電通国際情報サービス

  • English

ホーム > ソリューション > 金融ソリューション > これからの金融ビジネスを考えるFIBP(Financial Innovative Business Project) > 金融イノベーション最新事情 〜Finovate 2011 Spring 参加報告〜

ソリューション

これからの金融ビジネスを考える FIBP Financial Innovative Business Project

金融イノベーション最新事情 〜Finovate 2011 Spring 参加報告〜

株式会社電通国際情報サービス 金融ソリューション事業部 齋木 健次
2011年9月7日掲載

はじめに

Finovate(*1)とは、Financial Insite, Inc.が主催する、金融分野(financial)のイノベーション(innovation)に特化したものとしては、世界最大級のカンファレンスです。2007年に開始し、年々その規模は拡大され、今では春にサンフランシスコ、秋にニューヨーク、冬にロンドンと、年に3回開催されるほどになりました。以下に、2011年5月10-11日サンフランシスコで開催されたFinovate 2011 Springの概要を報告します。

Finovate 2011 Springの概要

Finovate2011 Springの概要は以下の通りです。登壇企業のデモンストレーションはFinovateサイトに公開されています。(*2)

登壇企業数:64社
内訳は、スタートアップ(設立3年以内・従業員10人未満)が約半数、成長段階にあるベンチャー企業(設立4-5年)が40%程度、大手企業が10%程度です。また、半数以上の企業がFinovateへの参加は初めてであり、ベンチャー企業の新陳代謝が活発です。出身国別には、ほとんどが米国企業で、その他は、スペイン2社、ニュージーランド1社、ウクライナ1社、インド1社でした。
出席者:800人程度
内訳は、金融機関、ベンチャー企業、ベンチャーキャピタル、IT企業がほぼ同数です。日本からの参加者はほとんどいませんでした。
カンファレンススタイル:デモンストレーション
1社7分間のデモンストレーションのみで、スライドを使ったプレゼンテーションは禁止されています(写真1)。デモンストレーションに興味を持ったサービスについてはブースにて詳細を聞き、意見交換をします(写真2)。


写真1.デモンストレーション風景


写真2.ブース風景

サービス分野傾向とその特徴的なサービス

登壇した64社のサービス分野は多岐に渡っており、米国での金融イノベーションのすそ野の広さを実感しました。金融サービス利用時の不満・不便など、自分の経験をもとにビジネスを立ち上げるケースが多く、生活者向けや中小企業向け分野(ベンチャー企業社長としての経験)が充実しています。以下、5つの項目に分類し、今回Finovateに登場したサービスを概説します。

1.PFM(Personal Financial Management)

第1回目のFinovate(2007年に開催)に登壇した『Mint.com』の成功を目の当たりにし、この分野及びその周辺にあるイノベーションの可能性を確信した多くのベンチャー企業が現れています。個人の収入と支出の管理(家計簿)やファイナンシャルプランニング等のPFMを基本としつつも、以下のような先進的なサービスを付帯しているものが登場しています。

お金の管理と改善
保有する金融資産や負債、自身のプロファイルに応じて最適な金融商品を紹介するサービス
『Mint.com』進化を続けるマーケットリーダー
『Wikinvest』Wikipedia的な投資情報サイトから発展
子どもの教育
親子でコミュニケーションを図りながら金融について学べるサービス
『TILE Financial』親子がお金について会話をすることをサポート
『Kiboo』親と子(10-20代)で一緒にお金管理を実施
『BancVue』子供(8-14歳)向け金融教育アニメーションを提供
シェアやコミュニティの活用
自身のファイナンシャルゴール(いつまでに何の目的でいくら貯蓄する)をコミュニティ内で共有し、家族や知人からの応援やそのゴール達成の協力を依頼するサービス
『Afiniate』設定ゴールに対し、金融機関が金融商品を紹介
『GoalMine』設定ゴールに応じ、金融商品を紹介

2.リテールローン

サブプライム問題以降も、個人のローンに対する需要は堅調であるが、これまでのように闇雲に借りるのではなく、賢く借りることを支援するサービスが多く見られました。
『Kabbage』イーベイ出店者向けの特別ローンを提供『Billfloat』公共料金の一時支払いを代替(変形個人ローン)
『Bills.com』最適なリテールローン商品や携帯電話プラン等を推薦
『LendStreet』ソーシャルレンディングサービスを実施

3.少額の資金移動、決済

『Paypal』の成功が影響しているのか、既存の金融サービスに対抗する新規参入が多くみられました。個人間の資金移動では、携帯電話番号やSNSまたはTwitterのIDに送金できます。
『Opencuro』ワンタイムペイメントコードを発行。支払時の個人情報の送信不要。
『Dwolla』クレジットカードの代替。手数料は一律25セント。
『peerTransfer』留学生向け異通貨間送金。

4.マーケティング

購買履歴と、スマートフォンから取得される位置情報を掛け合わせた、トランザクションベースのジオロケーションマーケティングが注目されていました。グルーポンの成功に刺激され、さらなる進化を遂げています。
『Bankons』最寄りの最適なクーポンを提示
『BillShirnk』購買履歴をもとに最適なクーポンを表示

5.その他

請求書支払、管理、セキュリティ、システム開発環境、開発ツールなどに関するものがありました。

金融ベンチャーと既存金融機関との関係性

これら個別のサービスを俯瞰した金融ベンチャーの特徴は以下の4点に集約できます。

金融ベンチャーのサービス

一方、既存金融機関が提供するサービスは、誤解を恐れず表現するなら以下の4点に集約できます。

大手金融機関のサービス

この違いは、それぞれの役割から生じるもので、優劣や良し悪しはありません。金融サービス市場において、両者が共存し、競争・協力しながら、市場を活性化し、消費者・利用者に最良なサービスをいち早く届けることのできるエコシステムを構築することが重要です。
ビジネスアイディアを持った起業家が、ベンチャー企業を興し、ベンチャーキャピタルが事業資金を提供し、ベンチャー企業の成功を資金面から支援します。大手金融機関は、ベンチャー企業と競争しながら、必要なサービスはM&Aやベンチャー企業との提携、自社開発により自社内に取込んでいきます。金融イノベーションを牽引してきた米国においては、このような金融イノベーション創造のエコシステムが存在しています。

金融イノベーション創造プロセス

日本の金融イノベーション

欧米に比べると日本での金融イノベーションはほとんど見られません。それは、上記のようなエコシステムが機能していないことに起因すると言えます。金融分野での起業家が少ないこと、ベンチャー企業を支援する会社や個人が少ないこと、大手金融機関がイノベーションを取り込むプレッシャーまたはインセンティブが少ないことなど、構造的な課題が多くあります。今後、ISIDはここに風穴を開ける活動を行っていきます。

これからの金融ビジネスを考えるFIBP(Financial Innovative Business Project)トップへ